LINE User ID活用で態度変容を促す! LINE運用の最新戦略「LTVマーケティング」とは?
前々回は、LINE活用拡大戦略の勝ちパターン5つを紹介し、続いて前回、OMOに関する事例を紹介した。
第4回となる今回は、いわゆるダイレクト・ブランディング・販促系のKPIを持った部署が、どのようにLINEを活用すべきか、どういう状態になれば成功と言えるか、を考察していきたい。この連載は、「LINEの活用を図ること」と同時に「LINEというメガプラットフォーマーへの対抗力を付けること」を1つのテーマとしている。LINE公式アカウントの運用に成功すれば、社内の風向きも「もっとLINEを活用してみよう!」となるだろう。
“LINEだからこそできるLTVマーケティング”の時代が来た
LINEは2018年12月より、法人向けアカウントの“リデザイン”(メニュースペックの変更)を進めている。これにより、LINE公式アカウントのメッセージ配信については、実質的な単価上昇と完全な従量課金制への移行が起こった。同時に、LINE公式アカウントの運用戦略は、2018年以前と2019年以降で大きく変化した。具体的には、アカウントの友だち1人1人を大切にし、“いつ誰に何の訴求をすべきか”を、より一層緻密に設計する必要が出てきた。
参照元:【LINE】「LINE公式アカウント」において、本日より新プランの提供を開始 各種法人向けLINEサービスの「リデザイン」を本格始動 | ニュース | LINE株式会社
そして、これは「LTVマーケティング」への移行を示唆している。LTVは「Life Time Value」、すなわち継続的な顧客の囲い込みにより、生み出される利益のこと。“LINEだからこそできるLTVマーケティング”の時代が来たのだ。今までの運用課題を踏まえながら、LINEの運用戦略の移り変わりを説明していきたい。
LINE公式アカウントの運用は、3つの段階を経てきた
企業によるLINE公式アカウントの運用は、現在までに3つの段階を経てきていると、筆者は考えている。大まかにわけ、以下の3段階だ。
(1)LINE運用 1.0:マスマーケティングの時代
「LINEプロモーションスタンプ」で友だちを一気に集めて、全員にメッセージ配信する手法が主流だった時代。
参照元:LINEプロモーションスタンプ|LINE for Business
(2)LINE運用 2.0:ダイレクトマーケティングの時代
スタンプに加え、クリックユーザーに対するリターゲティングなど、Messaging APIを絡めた施策を実施し、ROIを主な指標とした時代。
参照元:Messaging API | LINE Developers
(3)LINE運用 3.0:LTVマーケティングの時代
施策ごとの点の売上やROIを指標とせず、顧客1人1人を“見える化”して、良好な関係を築き上げていくことを目指す時代。
これまでのLINE公式アカウント運用を振り返る
「マスマーケティングの時代」は比較的短く、すぐに「ダイレクトマーケティングの時代」がやってきた。「ダイレクト型LINE公式アカウント」と「ブランディング・販促型LINE公式アカウント」の2つの戦略が大まかに存在しているが、どちらも2019年以降新たな課題に直面している。
ダイレクト型LINE公式アカウント
「ダイレクト型LINE公式アカウント」は、Webマーケティング部など、いわゆるダイレクト広告を扱う部署が運用していた。Web上で商品購入が完結するEC通販企業などのアカウントがこれに当たる。
このようなアカウントは基本的に「売上・ROI」が主な指標で、1か月や1年単位で売上・ROIを最大化できるよう施策設計を行うのが一般的だ。主な施策としては、友だち全員に対する配信(ALL配信)とセグメント配信。セグメンテーションやクリエイティブ改善など、ダイレクト広告の指標(imp・CTRなど)をもとにPDCAを回していくのが中心だった。
しかし前述のとおり、リデザインの影響もあり、この運用戦略にも限界が出てきている。メッセージ1つ1つの効果を点で評価するような効果改善では、毎年スタンプを打って新規友だちを集め続けないといけないような、焼き畑的運用になりがちなのだ。
ブランディング・販促型LINE公式アカウント
「ブランディング・販促型LINE公式アカウント」は、Web上で商品購入までつなげることができない、メーカーのブランドマネージャや販促部などが運用するLINE公式アカウントだ。
このようなアカウントは基本的に、「リーチ=何人に何回訴求を届けたか」「エンゲージメント=CTRやアンケートベースの満足度等」「販促のキャンペーン告知のCTR」などを指標にすることが多い。
主な施策は、スタンプなどで集めた数百万単位の友だちに対して、ALL配信やセグメント配信でブランディングコンテンツ(CM動画など)を送りつつ、同時に販促キャンペーンを告知することで、店頭購買を後押しするような施策設計が多い。
その結果を、購買意向のリフト値、最終的なキャンペーン参加増加率などの視点で、アンケートも用いながらモニタリングし、半期単位でPDCAを回していくのが一般的だ。
そしてブランディング・販促型LINE公式アカウントも、新たな課題が出てきている。「本当に購入につながったのか」「購入率とエンゲージメントに相関があったのか」といった部分で正確な結果が見えず、仮説だらけの運用になりがちだった。リデザインによる配信単価上昇のあおりを受けて、“効果の見える化”が求められているのが現状だ。
LINE公式アカウントでのLTVマーケティングの利点
ここまでで説明した運用課題を解決できるのが、LINEのUser ID(UID)をもとに管理する「“LTV”を指標にしたLINE公式アカウント運用」だと筆者は考えている。
今までは友だち全体や特定セグメントに対して、投網をするような感覚でメッセージを送り、その「点のリアクション」だけをCTRやROIなどで評価をしてきた。しかし、LINE上でのアクションデータはほぼすべてUIDと紐づけて管理ができるのだから、これを前提としたOne to Oneの顧客育成戦略を立てるべきだ。
LTVマーケティングを実現するためには、大まかに2つのステップが存在する。
- 態度変容の目標・戦略・施策を設計する “誰を・どう変えたいのか”という理想の顧客イメージを作り、そこに至る歩留まりを「顧客ランク」として可視化し、態度変容の目標を作る。顧客ランク別に、育成のための分析を行い、施策設計に落とす。
- 実行環境を整える 上記実行に必要なシステムを整えていく。たとえば、顧客ランク別にUIDリストを抽出する機能、ユーザーごとのLTV変遷をリアルタイムモニタリングできる機能を構築する。
これらが実現できれば、ダイレクト運用もブランディング・販促運用も、今まで以上に効率化ができる。以下、「ダイレクト型LINE公式アカウント運用×LTVマーケティング」の戦略設計、「ブランディング・販促型LINE公式アカウント運用×LTVマーケティング」の戦略設計をそれぞれ見ていこう。
「ダイレクト型LINE公式アカウント運用×LTVマーケティング」の戦略設計の例
ここから具体的に「アパレル系」のダイレクト型LINE公式アカウントを例に、具体的な戦略・施策設計の流れを、以下の4ステップごとに解説していく。
- アカウント全体の友だちを、顧客ランク分けする
- 顧客ランク別に、離脱防止とランクアップ促進をするための示唆を分析する
- 示唆をもとに、顧客ランク別の離脱防止とランクアップ施策を具体化する
- 施策改善を行うPDCAスケジュールを策定する
(1)アカウント全体の友だちを、顧客ランク分けする
顧客ランク分けの条件としては、以下のような観点が考えられる。
- ブロックしているか
- クリックアクティブか(1年以内にクリックしているか)
- 購買経験があるか
- 累計購買回数が2回以上か
- 定性的なロイヤリティ(NPS:Net Promoter Score)は高いか
※NPS=ブランドへの愛着や信頼を質問形式の調査により計った、顧客ロイヤリティ指標
【分析結果の例】
一般的なダイレクト型LINE公式アカウントは、ブロックユーザーを除き、Rank1=「クリック非アクティブ(購買経験なし)」の数がもっとも多かった。たとえば、スタンプで友だち追加後に、クリックも購買もしていないユーザーが含まれていた。
補足ではあるが、一度購買をするとブロックしづらくなる傾向もみられる。
(2)顧客ランク別に離脱防止とランクアップ促進をするための示唆を分析する
【分析結果の例】
「友だち追加から初回購入に至るまでの日数」で、ユーザーのタイプが2つに分かれた。
- 「友だち追加から7日以内に初回購入に至るユーザー」が、全購入ユーザーのうち約7割だった。
- 「残り3割のユーザー(7日より後)」はロングテール型に分布しており、ある企業では友だち追加から2年ほど経ってから初回購入に至るユーザーも存在した。
上記の内、「友だち追加後180日以上経ってから初回購入に至ったユーザー」と「180日未満の購買ユーザー」とでは、初回購入商品の傾向にあきらかな違いが見られた。
(3)示唆をもとに、顧客ランク別の離脱防止とランクアップ施策を具体化する
「Rank1、Rank2のユーザーを、Rank3にランクアップさせるための施策」としては、初回購入を促進する施策が考えられる。
【施策の例】
友だち追加後7日以内に買ってもらえるよう「ウェルカムメッセージに初回購入クーポンを付ける」施策を行う(ウェルカムメッセージとは、友だち追加時にアカウントから自動配信されるメッセージで、「友だち追加挨拶メッセージ」とも呼ばれる)。それでも友だち追加後7日以内に購入しなかったユーザーには、「機能性商品」を訴求するメッセージを定期配信する。
(4)施策改善を行うPDCAスケジュールを策定する
【PDCAスケジュールの例】
上記2点の初回購入促進施策を実施し、2~3か月ほどの期間で未実施期間と比較し、「友だち追加ユーザーに対する購入率が上がったか?」などをモニタリング。効果が良ければ、施策用のクーポン内容やクリエイティブをさらに改善していく。
LINE上で計測した購買行動と基幹システム側の計測差異は、どのぐらい?
ここで「LINE上で計測した購買行動だけで、顧客ランクを判断していいのか?」という疑問も出てくるだろう。LINE上で管理している顧客ランクが、基幹システム側と大幅にずれていたら、そもそもこれまで述べてきた戦略は機能しない。ある企業のデータを分析したところ、LINE公式アカウント上と基幹システム側とで、購買回数の計測差異があったユーザーは、4割だった。
UIDを軸としたLINE上での顧客ランク分析はおおむね正しく、運用スピードやシステム上の実行ハードルなどを考えると、UID別顧客管理をスピーディに実行していくことは価値があると言える。ただし将来的には、基幹システム側とのID連携などを通して、しっかり顧客IDでのランク管理を両サイドで行っていくべきだ。
アパレルEC系企業「ベルーナ」の事例
さらに具体的な戦略設計の例として、アパレルEC系企業の「ベルーナ」の事例を紹介したい。ベルーナは、前述のダイレクト型LINE公式アカウント運用からLTVマーケティングに移行を図った第一人者だ。ここでは、その移行途中で出てきた興味深い示唆が得られた分析事例を紹介したい。
協力: 株式会社ベルーナ
分析結果やデータは、事業内容・規模・時期・環境によっても変化するため、あくまで参考であるが、「一見難しく見える戦略でも、ちゃんと実現している企業が存在している」のは事実だ。自社アカウントの運用戦略を再検討するきっかけにしてほしい。
まずベルーナの場合、「非物販の訴求がもっともユーザー復帰をうながす」という仮説を検討。そのうえで「1年以上クリックしなかったユーザーが復帰した訴求コンテンツ」のランキングを作成した結果、以下の知見が得られた。
【分析結果の例】
「ユーザーを楽しませる非物販の訴求×タイムライン投稿」が、クリック非アクティブ者(未クリックor1年以上クリックしていない離反者)の掘り起こしにつながる。
UIDごとに分析し、1年以上クリックしていなかった非アクティブ者が、どのコンテンツで復帰したのかを分析してみたところ、仮説どおりであることが立証された。さらに興味深いことに、「PUSH通知が届くメッセージ配信ではなく、タイムライン投稿からユーザーが復帰していること」も、この分析から判明した。
「ブランディング・販促型LINE公式アカウント運用×LTVマーケティング」の戦略設計の例
そして、「ブランディング・販促型LINE公式アカウント運用×LTVマーケティング」の戦略設計だが、こちらも、大まかな流れはダイレクト型運用とほぼ同じである。
唯一違うところは、購買がWeb上で計測できないことだ。これを解決するためには、LINE上で販促キャンペーンを組んで模擬的にLTVを可視化し、アンケートや外部の購買証明と絡めて、実購買のLTVまでをUIDごとに管理できる環境を整えていく。
LINEをマーケティング活動に使うことで、メーカーなど直接的にユーザー接点がない企業でも、OMO(Offline merges with Online)により、顧客のLTV管理ができる。このLINEならではの特長を生かすことで、今まで仮説だらけだったブランディング・販促型のアカウントでも、ダイレクト型と同じように確実な投資対効果を得られる運用が可能になる。
“LINE運用 3.0”というLTVマーケティングの時代にふさわしく、ユーザーごとに離脱防止・ランクアップを図っていくことで、“焼き畑式ではなく、雪だるま式”の運用効果を生むことができるのだ。
まとめ
今回は、新しい運用戦略である「LINEならではのLTVマーケティング」を紹介したが、この戦略は今後どの企業にとっても絶対に大事になっていくだろう。
その環境構築や戦略設計など多岐にわたる実行上のハードルを、読者の皆様が超えていけるよう、この連載記事や私の本業であるLINEコンサルティング事業を通して、支援していきたい。
「TSUNAGARU」は、LINE公式アカウントを開設する企業向けに、オプトが提供するマーケティングツールです。ASPサービスにて、Messaging API配信をより高度に活用できます。
IDシンク、メッセージ配信、BOTによる自動応答、AIチャット、バーコード表示、アンケート作成、クリックデータ収集、LINE Beacon管理、MA(マーケティングオートメーション)機能、コールセンターサポート、UID統合分析などの機能を搭載し、Messaging API配信を導入・実装する上での企業のシステム開発負荷を大幅に軽減。LINEを含めたネット広告領域の効果の最大化、ユーザーのLTV向上を実現いたします。
オプトでは、企業様へのLINEを活用した統合マーケティング施策のご提案を行っており、企業様のニーズに合わせ提案から改善まで全てサポートいたします。お気軽にお問い合わせください。
TSUNAGARU
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